秋が深まり、三郎と博麻呂は新米と絹織物を積んで博多湾から末盧の半島をを回り平戸と五島の間を南下、薩摩、屋久島、奄美の島々を経由して琉球の要、首里の泊港に入港。港の官吏に東日流の安倍博麻呂を案内人に俀国使が交易に訪れたと申し入れた。
連絡に行った役人が戻り博麻呂達に伝えた。
「キキタエ様がお会いになります。宮殿にお上がり下さい」
三郎と博麻呂は新米と反物を小舟に積み替え安里川を遡り宮殿に昇った。宮殿はニライカナイ信仰で西向きに開かれ、泊港が手に取る様に眺められた。扶座して待つこと暫し、白髪の婆々が白の神官装束に身を包んで出座した。
「はるばる見えられた。俀国は如何なる国か」
三郎が軽く叩頭し、
「東表国から筑紫の吉野ヶ里の割譲を受けたシメオンの大国主命の後継ぎが大和に築いた秦王国を継承したレビの大王の二代目が周芳の柳井水道に遷都し俀国を名乗り天子足庭号しております。初代大国主様の委奴国が扶余の北倭軍に攻められた折、長髄彦様が矢面に立たれ、お助け頂きました。その縁で此度は、筑紫の奪還に東日流の安倍博麻呂殿が参軍され、更には琉球訪問の案内に立って頂けました。我は足庭の弟の三郎で御座います」
「安倍博麻呂殿、長の航海ご苦労様でした。長髄彦の裔は如何しておろうか」
「荒吐五王国の纏めに就かれております」
「東日流に帰還したら、男の子を琉球に戻して下されと伝えて下さらんかな。王家の再興に相応しい者が中々現れず困っております。隋という国が中国を統一して、我らにも朝貢を促しており、対処する人材が居りませぬ」
「必ずや、お伝えいたします」
「三郎殿、足庭様にお伝え下され。琉球は今、隋の脅威に曝されておりますと」
「承知いたしました。此度は筑紫で収穫した新米と飛鳥から絹織物をお持ちいたしました。ご受納下さい。来春には別の隊が高句麗になどへ交易に参ります」
「おうそうであった、交易で見えられたのでしたな。齢を取ると気が急いて困ったものじゃ。飾り細工に使う夜光貝と木工に使うアカギの角材を持ち帰って頂こうかな。それと、高句麗に行かれるのであれば尚家の若者を連れて行って下され」
「承知いたしました」
「今宵は鄙の料理でお寛ぎ下され。我は出ぬが歌垣を催すゆえ兵士も水夫も皆呼ばれよ」