「不比等」1

 六百七十二年、新羅占領軍総司令官・レビ族の郭務悰は飛鳥の秦王国鎮圧作戦に臨み、花郎軍団の源花・中臣氏の金庾心と情報交換した。

 郭務悰が「現大王家のレビ族を降ろした後の統治は十四代迄続いた前大王家のシメオン族を重用するのが得策かな」

 金庾心が「それなら、十三代の三男が鹿島に扶桑国を建国しており、今は直系がシメオン族の族長を務めている。目星が付いたら、大和に呼び寄せ、協力させれば良い。中臣が教育係を務めている」

 郭「なるほど。多くの豪族を押さえ込むには、もう一押し欲しいな」

 金「シメオン族とガド族が始皇帝の焚書坑儒以来、八百年に渡り抗争諍いを続けているが、秦王国の筑紫奪還作戦の折、東漢のレビ族がガド族に協力を求めている。レビ族の貴方が両者の仲直りを仲介をするのが良いのでは」

 郭「面白い。シメオン族の若き族長にガド族の娘を娶せよう」

 六百七十二年六月、郭務悰は花郎軍団を率いて大和に侵攻し、戦いながら豪族達の懐柔工作に力を割いた。鹿島にいるシメオン族の族長に大和に入るよう連絡をし、伊勢のガド族の族長にも両者和合のため適齢期の娘をシメオン族の族長に嫁がせる人選を依頼した。

 また、三輪氏、葛城氏、和邇氏、春日氏など割拠する他の豪族にも新羅占領軍政への協力を働きかけた。戦いが一月を過ぎる頃、豪族達は花郎軍団の統率ある戦いに無益な抵抗と判断し一斉に占領軍に寝返り、東漢氏レビ族を中心とする秦王国軍は孤立し総崩れします。

 郭務悰はシメオン族の若き族長とガド族巨勢(津守)氏の娘・宮子姫の結婚を仲人し、八百年を超える抗争諍いに終止符を打たせます。シメオン族の若き族長、後の藤原不比等を軍政に協力させ、不比等が三十六歳の時、修史官として昇殿させます。後の藤原氏の系図作りで、金庾心と郭務悰を合成した大織冠・藤原(中臣)鎌足を創出し、その子藤原不比等とします。不比等と宮子は三男二女を設け、後に金庾心の子を加え、表向きは四男二女としている。