俀国の都、柳井水道一帯に新緑の季節がめぐり足庭は律令制、国造制の整備や織物業などの産業振興、新田開発を始めとする食糧増産などに意を尽くしていた折、足庭の次男の出雲王からサンカ衆の山越えで高句麗訪問団が無事出雲に到着し、博多に向かったと急使が届き、足庭は三郎と羅尾と身狭隊を伴い歓迎準備を整えるべく博多に急行した。
博多の那の津に入った足庭は春日の王宮の太子に応援を頼み、豊国王の次郎には遠賀川沖通過時に来賀伝達。那の津の沖合に訪問船団の船影が見えカゴメ紋の幡のはためきを見て、足庭は小舟にカゴメ紋の幡と紅白の幟をを掲げた迎え舟を多数出した。
筑紫王の太子が那珂川を下り那の津に入り足庭達に合流した時、高句麗訪問団を乗せた船団が砂州に囲まれた那の津の入り江に入港し、追尾する様に豊国王の次郎の祝船が沖合に姿を見せ、住吉大明神の神域を背に足庭と太子達が勢揃いしカゴメ紋の幡と紅白の幟を打ち振る中、訪問船団はゆっくりと岸壁に接岸した。
足庭は弾達訪問船団一行に声を掛けた。
「大役、ご苦労様。無事の帰着、祝着でござる」
弾が声をあげ、
「華やかなお迎え、驚嘆いたしました。多数のお揃いでの歓迎、痛み入ります。ありがとうござる。思い掛けない土産が多数ござる。お喜び下され」
足庭が目敏く、
「仔馬を持ち帰られたか」
「華麗な馬具も一緒に持ち帰りました」
「仏教僧を連れ帰られたか」
「嬰陽王様から学問僧を委ねられました」
「それは喜ばしい。積もる話もあろうが、皆で春日の王宮に参ろう」
帰朝歓迎の宴で足庭が弾に、
「高句麗訪問は如何じゃった」
「訪問は大変有意義でござった。絶妙の機会であったと存ずる」
「なにゆえ」
「高句麗第二十六代嬰陽王は即位間も無くで殖産振興、富国強兵に邁進されているのですが、隣国中国を統一したばかりの隋が領土拡大政策を顕わにしており、長い国境線を接している高句麗と早晩衝突すると危惧されており、我らに尽力を望まれました」
「具体的には」
「訪問団の我らに傭兵外人部隊への入隊を誘われました」
「それで何と返答された」
「戻り次第、足庭様と相談いたしまして、然るべき方策を考えますると、お答えいたしました」
「それで良い。三郎、太子、どうじゃろう、高句麗と同盟を結んで駐在武官を派遣する方法は」
太子が、
「父上のお考えに賛同いたします」
「弾殿、如何であろう」
「足庭様のご思案に賛同いたしまする」
「三郎殿、琉球には領事を駐在させますかな」
「それが宜しいかと存じます。何れにいたしましても、迅速な情報収集の一助になりましょう」