東日流十三湊に帰着していた、安倍博麻呂は岩木山の山麓に建つ総領主の館を訪ね長髄彦の末裔に拝謁して、
「俀国の筑紫奪還は無事終了いたしました」
「それは祝着であった」
「足庭様の強い要請があり、琉球に三郎様を案内いたしました」
「遠路大儀であったな」
「キキタエ様にお目に掛りましたら、総領主様に言付けをされました」
「なんと」
「王家を建てる人材が未だ育たない、長髄彦様の血を引く男の子を琉球に返して欲しいと仰いました」
「心得ておこう」
「筑紫の新米と飛鳥の絹織物と琉球の夜光貝を持ち帰りました」
「大儀であった。早速に新米を炊かせて、皆で食べよう。誰ぞ酒と肴を持て」
「博多を立つ時に高句麗訪問団が帰着し歓迎の宴に招かれました。高句麗は第二十六代嬰陽王の代になり殖産振興、富国強兵に邁進されておられるが隣国の中国を統一したばかりの隋が領土拡大政策を顕わにし、早晩衝突すると危惧されている由」
「そうか、中原に隋という統一国家が生まれたか」
「足庭様は高句麗と同盟を結び駐在武官を派遣しようと仰せでした」
「我らの祖、長髄彦様は高句麗とは浅からぬ絆。足庭殿が支援を求めて来たら対応せねばなるまい。我らも高句麗貿易に乗り出すかな」
「それは、よろしゅうございます」