光元三年正月、足庭は慶賀行事を終えると、三郎を呼び第二回遣隋使派遣の詰めに入っていた。
「三郎殿、書き留めてくれぬか、国書の書き出しじゃが『日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。恙無しや』で始めよう」
「足庭様、それは面白うございます。第一回の時は隋は太陽に俀を金星に擬え相手を持ち上げた積もりでございましたが理解を得られませんでした。これは易しくて判りやすい比喩です」
「少しは反発があるやも知れんが俀と隋は天子どうし対等じゃとの表明でもある。高句麗や琉球への侵攻は親善国として看過できないとも書いて貰うかの」
「それは次の機会にされた方が良くはございませんか」
「それとなく表現したい。何か上手い手立てを考えて下され」
「畏まりました。考えてみます」
「それから、使節団に学問僧を加えよう」
「恵慈殿に人選を依頼いたします」
「そうして下され」