その秋、悲報が飛び込んだ。夜麻苔の平群から早飛脚が、静養していた弾の急逝を知らせた。足庭は直ちに平群の里に急行し、殯の宮に安置された竹馬の友を悼んだ。西漢の本拠地河内の百舌に陵の建設が決められた。足庭は東漢の石工の総動員を指示した。
柳井水道の王宮に戻った足庭に更なる悲報が待っていた。豊国王の次郎が不慮の事故で逝去したとの知らせ。足庭は王座を温める間もなく豊の国に赴き殯の儀式に参列した。
翌春、隋は琉球に朝貢を促す軍を催し再び略奪した。そして、高句麗遠征の準備に再び着手した。
足庭は三郎と協議を重ね苦渋の決断をした。
「隋と国交を断絶します。手続きをして下され」
「可及的速やかに手配いたします」
煬帝は鴻臚卿に俀国との国交断絶を周辺国に通知させた。
百済の余泉章が慌ただしく九重山系の山間に入り倭国、額田王の柵を訪ねた。
「額田王様、俀国が隋と国交を断絶しました」
脇に控えた多治比広手が笑みを浮かべて、
「女王様、千載一隅の機会が参りました。風の噂では弾と次郎が身罷ったと」
「広手、丁度十年じゃな。直ぐに確認を取って下さい。それから各地の安羅人、伯族、濊族と物部一族と白丁隼人に戦闘準備指令を出して下さい」
泉章が、
「百済に渡った物部の一族にも少し手伝わせましょう」
広手が、
「人吉の相良、日向の西都原、肥後の菊池、薩摩の各地に至急手配をいたします」