「上宮聖徳」6

 翌年秋、悲報が飛び込んだ。大和の平群から早飛脚が静養していた弾の急逝を知らせた。足庭は直ちに平群の里に急行し、殯宮に安置された竹馬の友を悼んだ。西漢の本拠地、河内の百舌に御陵の建設が決められ、足庭は東漢石工の総動員を指示した。

 柳井水道の王宮に戻った足庭に更なる悲報が待っていた。豊国王の次郎が不慮の事故で逝去したとの知らせ。足庭は王座を温める間もなく豊の国に赴き殯の儀式に参列した。

 翌春、随は琉球に朝貢を促す軍を催し再び略奪した。そして、高句麗遠征のの準備に再び着手した。

 足庭は三郎と協議を重ね苦渋の決断をした。

「隋と国交を断絶します。手続きをして下さい」

「可及的速やかに手配をいたします」

 隋の煬帝は鴻臚卿に俀国との国交断絶を周辺国に通知させた。

 百済の余泉章が慌ただしく九州山系の山間に入り倭国額田王の柵を訪ねた。

「額田王様、俀国が随と国交を断絶しました」

 脇に控えた多治比広手が笑みを浮かべて、

「女王様、千載一遇の機会が参りました。風の噂では弾と次郎が身罷ったと」

「広手、丁度十年じゃな。直ぐに確認を取って下さい。それから各地の安羅人、伯族、濊族と物部一族と白丁隼人達に戦闘準備指令を出して下さい」

 泉章が、

「百済に渡った物部の一族にも手伝わせましょう」

 広手が、

「人吉の相良、日向の西都原、肥後の菊池、薩摩の各地に至急手配いたします」