飛鳥檜隈館に戻った比呂仁和は一族の主だった者を集め、
「本日、大国主様から直々にお声掛けがあり、大王位を継承するすることになった」
「おめでとうございます」
「既に察しておったと思うが、これより恙無き継承に向かって、一族を挙げて万全を尽くそう」
「畏まりました」
「大王様から一つだけ引き継ぎがあり、筑紫の地の奪還を託された」
礼尾が、
「初代、大国主様が討たれた地ですね」
「それと、シメオンやガドが継承してきたヘレニズムを学べと仰せじゃ」
三郎が嬉しそうに、
「勉学は任せてください」
「皆で学ぶのじゃ。それと、東日流の荒吐五王国と仲良くせよ仰せじゃった。大二郎、三郎を連れて東日流に行ってくれ。木津川から琵琶湖に入り余呉湖を抜け、敦賀から十三湊に行けば早かろう」
「畏まりました」
「父上、反物を土産にしますか」
「そうしてくれ、立つ前に琵琶湖の水運を握っている和爾氏と息長氏に断りをいれよ。それから、山師も連れよ、帰りは若狭や琵琶湖沿岸の鉄鉱石の産地を探索して下され。太子と次郎と三郎は残ってくれ、皆、宜しく頼みまするぞ」
三人が残り、
「筑紫の奪還は大事だ、着実に進めようぞ。まず、西への足掛かりに先代の大国主様の次男が拓かれた播磨の文身国の姫との婚姻を進めるが良いか」
「お任せします」
「次郎、当代の大国主様の末の姫との婚儀を進めるが良いか」
「よろしくお願いします」
「三郎、余呉湖へ行くと天女に巡り逢えるそうだ」
「本当ですか」
「余呉湖には羽衣伝説があるそうじゃ。お前には出雲の土師氏の姫との婚儀を考えているが未だ九歳だそうだ。三年後が良かろう」
「お任せいたします。余呉には薄物の反物を持って参ります」
「言うのう、継承も奪還も容易ではない。親、兄弟、力を併せて邁進しようぞ」