飛鳥檜隈館に戻った比呂仁和は一族の主だった者を集め、 「本日、大国主様から直々にお声掛けがあり、大王位を継承するすることになった」 「おめでとうございます」 「既に察しておったと思うが、これより恙無き継承に向かって、一 […]
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「日出処の天子」7
大和盆地の水田が緑一色になった頃、梔子や紫陽花が咲き競い、桃の実が鈴生りの、纏向王宮に呼ばれた、東漢の長は大王の寝所に入り叩頭し、 「東漢の長、比呂仁和、まかり越しました。大国様の弥栄を守り導き給えと慎み敬い申し上げま […]
「日出処の天子」6
大和川との合流地点に差し掛かり船は切り返す様にして大和川を遡上、飛鳥の檜隈に入り、礼尾は父親の館を訪れ太秦と物見の報告を済ませた。 「礼尾、平群をダン族の根拠地にしてもらおうかの。太秦の河勝が纏向に入るのを抑えられよ […]
「日出処の天子」5
礼尾が独り言のように。 「斑鳩の辺りは池がたくさんあるな、その向こうは三輪山か、兵長、この辺りは誰の領地かな」 「あそこで藁を漉き込んでいる立派なお百姓に少し聞いて見ます」 兵長は杖刀を兵に預け、百姓に声を掛けた。 「 […]
「日出処の天子」4
礼尾たちは木津川を遡上し、本流が東へ向かう木津付近で支流に入り三笠山が近くに見える場所で下船した。 「今日はここで野営をするぞ。次郎、明日は佐保川で小舟を調達しよう。先に行って捜してくれ」 「太子様、石を運ぶ船を佐保川に […]
「日出処の天子」3
「カゴメカゴメ、カゴノナカノトリハ、イツイツデアル、ヨアケノバンニツルトカメガスベッタ、ウシロノショウメンダアレ」 寝所で休んでいた、礼尾と弾が童(わらべ)の声に目を覚ました。 「礼尾、昨夜の長殿の話は承けるのか」 「大 […]
「日出処の天子」2
再び、大和川を遡り、急流の亀の瀬で軍船から小舟に乗り移り、飛鳥に入った小舟は東漢氏の一大軍事基地に辷り込んだ。 「太子様、長がお待ちです」 「ダンの太子を同道したと親父殿に伝えてくれ」 「日下の物見から連絡が入り、ご承知 […]
「日出処の天子」1
二艘の軍船が茅渟の海から河内湾に入り、大和川を遡上していた。 「礼尾、真っ直ぐ飛鳥に戻るのか」 「日下で傀儡館に寄り道するぞ」 「馴染みの娘でもいるのか」 「弾も聴いておろうが、大王様が臥せっておられる、長くは無いかも […]