紅葉に彩られた柳井水道の王宮に竹斯王ミチタリからの急使が飛び込んできた。 「足庭様、日田の奥の九重山中で不穏な動きが見られます。倭国の挙兵と考えられます」 「羅尾、飛鳥と出雲国と文身国に出兵の連絡をして下され」 「畏ま […]
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「上宮聖徳」6
翌年秋、悲報が飛び込んだ。大和の平群から早飛脚が静養していた弾の急逝を知らせた。足庭は直ちに平群の里に急行し、殯宮に安置された竹馬の友を悼んだ。西漢の本拠地、河内の百舌に御陵の建設が決められ、足庭は東漢石工の総動員を指 […]
「上宮聖徳」5
飛鳥大寺が完成、足庭は久し振りに飛鳥に戻り落慶法要に臨んだ。伽藍配置は高句麗から渡来した高僧恵慈の指導の下、一塔三金堂を回廊で囲い、その北に講堂を配している。西門は間口を大きく取り槻広場に開かれていた。足庭は恵慈を招き […]
「上宮聖徳」4
そして数年後、弾が高句麗から帰国し、足庭は総出で博多港の住吉大明神前に出迎えた。 「大役、ご苦労様。無事の帰着、祝着でござる」 弾が声を上げ、 「華やかなお出迎え、驚嘆いたしました。多数お揃いでの歓迎、痛み入ります。 […]
「上宮聖徳」3
翌早朝、杖刀の兵を従えて大和川を下ったミチタリは日下の津の傀儡館で小休止した。館の主の紫門が挨拶に現れ、 「姉の詩音がお世話になっております。羅尾にも良くして頂けありがとうございます」 「何を仰いますか、詩音様には、こ […]
「上宮聖徳」2
ミチタリは再び飛ぶように柳井水道に戻った。母子は飛鳥の官衙の一画に入り祖父や父親不在で慎ましやかな生活を始めて程なく、柳井水道から筑紫侵攻作戦の開始、筑紫奪還の成功の知らせが次々と飛鳥の官衙に届いた。飛鳥だけで無く纏向 […]
「日出処の天使」完 第二部「上宮聖徳」1
三笠山の頂きに朝暘が昇り、斑鳩の里に点在する溜池の群れを照らし、 アキアカネが乱舞し、柿の木には青い実が育ち始めていた。 産屋から赤子の泣き声が甲高く聞こえ、家人達に歓声が上がった。 「太子がお生まれになったぞ」 「 […]
「日出る処の天使」66
西都原の男狭穂塚古墳を見終えた古代史サークルのOB四人はレンタカーでそのまま福岡県古賀市の船原古墳に向かった。 ハンドルを握った島津が、 「それにしてもグッドタイミングだよな。帰国の日に船原古墳で金の馬具が見付かった […]
「日出る処の天子」65
平成二十五年六月、古代史サークルのOB四人は羽田発のJAL一番便で宮崎へ発ち、空港でレンタカーに乗込み西都原古墳に向かった。 ハンドルを握った島津が、 「卑弥呼はイカッサル族公孫氏大物主王家の宗女で、王家が遼東半島に […]
「日出処の天子」64
坂上が、 「僕はイカッサル族の話をしよう。目は茶色、BC七世紀頃、アンガ系チャム人を従えてタルシシ船でインド洋マレー海峡から北上して華北中原に入っているが、途中、ソロモンとシバの女王ビルギースとの間に生まれたメリケリ王 […]