「上宮聖徳」12

 筑紫敗戦の反省もあり、秦王国の族長会議は定期的に開催されるようになっていた。  東漢と西漢を中心とした体制から、太秦の泰氏や蘇我氏の台頭が著しい状況になり、次の大王位は東漢の一存では決めさせない雰囲気が醸成されていた。 […]

「上宮聖徳」11

 飛鳥の王宮で道庭が久し振りに寛いでいると、鬼前太后が歩み寄り、 「そろそろ、上宮聖徳の正妃を決めなければ成りませんね」 「だれぞ、心当たりがあるか」 「播磨の文身国に大国主様の血を引いた干食姫がおられます」 「その姫な […]

「上宮聖徳」10

 道庭は上宮聖徳の立太子の儀を槻広場で盛大に催した。上宮の乳母を務める土師氏達に見守られ煌びやかな衣装に身を包み道庭に譲られた馬具を装備した馬に跨がり広場を巡った。  久し振りの明るい儀式に飛鳥は沸き立っていたが、上宮聖 […]

「上宮聖徳」9

 平成三十年四月、上雉大古代史サークルOB四人組は久し振りに大学近くのレストランに集まった。西園寺は日銀に入行し総務人事局に配属されていた。 「島津、外務省の居心地は」 「北米局にいるんだけど、走り回っているよ。ダンスの […]

「上宮聖徳」8

 道庭は柳井水道に取って返し、三郎叔父を労い、足庭の亡骸と後宮の女達と金銀財宝の搬送を指揮した。  延べ三百艘に及ぶ搬送作業を終えて飛鳥に戻った道庭の元に石工頭が殯と陵墓の候補地の報告に訪れた。 「足庭様の殯の地は斑鳩近 […]

「上宮聖徳」7

 紅葉に彩られた柳井水道の王宮に竹斯王ミチタリからの急使が飛び込んできた。 「足庭様、日田の奥の九重山中で不穏な動きが見られます。倭国の挙兵と考えられます」 「羅尾、飛鳥と出雲国と文身国に出兵の連絡をして下され」 「畏ま […]

「上宮聖徳」6

 翌年秋、悲報が飛び込んだ。大和の平群から早飛脚が静養していた弾の急逝を知らせた。足庭は直ちに平群の里に急行し、殯宮に安置された竹馬の友を悼んだ。西漢の本拠地、河内の百舌に御陵の建設が決められ、足庭は東漢石工の総動員を指 […]

「上宮聖徳」5

 飛鳥大寺が完成、足庭は久し振りに飛鳥に戻り落慶法要に臨んだ。伽藍配置は高句麗から渡来した高僧恵慈の指導の下、一塔三金堂を回廊で囲い、その北に講堂を配している。西門は間口を大きく取り槻広場に開かれていた。足庭は恵慈を招き […]

「上宮聖徳」4

 そして数年後、弾が高句麗から帰国し、足庭は総出で博多港の住吉大明神前に出迎えた。 「大役、ご苦労様。無事の帰着、祝着でござる」  弾が声を上げ、 「華やかなお出迎え、驚嘆いたしました。多数お揃いでの歓迎、痛み入ります。 […]

「上宮聖徳」3

 翌早朝、杖刀の兵を従えて大和川を下ったミチタリは日下の津の傀儡館で小休止した。館の主の紫門が挨拶に現れ、 「姉の詩音がお世話になっております。羅尾にも良くして頂けありがとうございます」 「何を仰いますか、詩音様には、こ […]